2016年11月28日

ソウル アリンスキーの弟子たち

アマゾンビデオで、「ヒラリーのアメリカ 民主党の秘密の歴史」というのを見た。
監督は、デスーザというインド系アメリカ人。
primeでないので、有料ビデオだがなかなか面白かった。
ヒラリーのアメリカ、民主党の秘密の歴史 -
ヒラリーのアメリカ、民主党の秘密の歴史 -

この中で、ソウル アリンスキーという人間を紹介している。アリンスキーは、オバマが昔、研究対象としており、さらにヒラリークリントンの若いころからの師匠でもある。
オバマとヒラリーは、アリンスキーという共通のメンターによって結びついている。

アリンスキーは、この映画の紹介によると、自身が犯罪者であり、かつ犯罪心理を研究する研究者でもあり、そこから一種の大衆操作術、大衆扇動術のようなものを考えた人間らしい。一言でいえば頭のいいサイコな野郎だったわけだ。
オバマもヒラリーもこのアリンスキーの大衆操作術を習得し、政界でのし上がっていったと考えられる。

この映画では、ヒラリーとビルの関係についても触れている。ヒラリーにビルは操られており、ヒラリーの政界進出の道具だった。ヒラリーとビルは一種のボニーとクライドのような関係だったと指摘している。
さらに、クリントン財団の犯罪についても、証言をしている。

今後、クリントンファミリーが牢屋に入るかどうかは見ものだが、ヒラリーの国務長官時代にしたと考えられている犯罪は他国からみれば、アメリカ自体の国家犯罪になり、巨額賠償の対象になるので、闇に葬る可能性も高そうだ。

こういうのを見ると、選挙制度の根本的な欠陥は、人々が投票する人間に関して何も知らないで投票することにあるのだろう。その点、日本はアメリカ以上に立候補者の情報が分からない。


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2016年11月27日

法律という国のかたち

ある国や社会を知ろうとするとき、その国の歴史や地理、宗教、文化、習俗的なものを知ろうとするのが普通だが、それだけでは不十分だ。その国の法システムを知ることが大事である。
しかし、法律は膨大にして極めて複雑であり、自国の法律ですら何も知らないのに、他国の法システムを知ることなど出来ない。だから、ある程度の概念的な理解に留まるのは仕方がない。

思うにこれは外国だけでなく、自国のことであっても、その法律に対するある程度の理解がないと何もわからないのではないか。
日本では政治的な話題はニュースになるが、それが法律問題として認識されることはほとんどない。派閥や人間関係のドラマとして、面白おかしく報道されるのが落ちである。
マスゴミや元マスゴミのジャーナリストも法律を知らなすぎる。日本の保守系言論人と言われる人も、元ジャーナリストや文学部の教師というのが多く、法律も経済についてのまともな理解力も知識もなさすぎる。もちろん、左翼の連中もこの点は変わらない。

アメリカの特徴としては、政治家に法律家の割合が非常に多いことがある。政治家は本来がLaw makerなのだから当然と言えば当然のことかもしれない。
先進国の中の比較では、日本は法律家出身の政治家は少ない。日本の国会議員は、衆参合わせて717人の内、法曹出身は42人しかいない。
アメリカでは、上院100人の内、51人が、また下院440人の内、151人が法律家である。さらに各議員が多くの法律家スタッフを抱えている。
特にアメリカのような国を理解するには、法律を知らないと何も分からないだろうが、多かれ少なかれ、どの国であっても、国家というのは法律によって国のかたちのアウトラインが決まっていると言える。


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オバマケアという大災害

トランプの主張を知るのに一番よい本は、トランプ本人が書いたマニフェストというべき”Crippled America”だろう。評論家のバイアスのかかった本よりも、一次資料としてこちらを読むべきである。
この日本語翻訳「傷ついたアメリカ」も出ている。

この中で、オバマケアに対するトランプの批判が簡単に述べられている。
日本人はオバマケアと言われても全くなにもわからないだろうが、アメリカに住んでいる知人から聞いてもこの保険料支払いだけで月に10万円以上になったりで、かなり大変だそうだ。

トランプは、オバマケアそのものが大災害だと非難しているが、その理由は、
1.控除免責額が上がり続け、免責額があまりに高くなり、トラックにでも轢かれなければ保険がでない。
2.保険会社からの支払いを受けるために医者は、看護師よりも会計士やプログラマーを多く雇わなくてはならない。
3.保険会社とは各州で一つの会社としか交渉できない。普通は競合によって値段が下がるものだが、現行法は保険会社同士の競合を防いでおり、各州で実質的な独占を行わせている。
4.アメリカは社会保障も高齢者向け医療保険制度も切り捨てることはできない。そんなことは論外だ。これらは経済を発展させることで存続が可能だ。
5.米国民に手の届く医療保険をいかに提供するかといった複雑な問題に対して、私はビジネス上の問題解決と同じ手法を使う。その問題についてもっとも知識の豊富な専門家を雇い、彼らを部屋に閉じ込め、何らかの方策を考えだすまで外に出さないのだ。

最近、トランプはオバマケアを廃止しないと言うようになったとか日本のニュースでは言っているが、そんなことはない。最初からトランプは医療保険制度の重要性は主張しており、オバマケアの制度設計が酷すぎると批判しているだけだ。トランプは保険会社の地域独占を終わらせ、保険会社に競争原理を持ち込むことで、医療保険制度の抜本的な改革をしようとするだろう。

オバマのような極左といってもいいリベラルの政策は、保険会社に独占をさせたりといかにもな社会主義的なトンデモ政策だったことが問題なのである。
オバマは日本の菅直人のようなどーしようもない左翼活動家に近い人間だったと思う。

トランプは経済を発展させることが医療保険を充実させる上で重要だと言っているが、全くその通りであり、このことは日本においても全く同様なのである。

ちなみに、オバマケアという国民皆保険制度はその制定以前から合憲性が問題視されており、もとより健康保険への加入を国民に強制する権限は連邦政府にはない。
そのため、違憲訴訟が多く提起されたが、セベリウス事件で最高裁は5:4の僅差でこれに合憲判断を下した。
主席判事ジョンロバーツの法廷意見は、その根拠を連邦政府の課税権においた。しかし、この論理にはかなりの無理があり、強い批判がいまだにある。

THE TRUMP - 傷ついたアメリカ、最強の切り札 - -
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連邦最高裁判事

アメリカの連邦最高裁判事は9人で構成されるが、スカリア判事が今年急に亡くなったので8人の状態にある。
具体的には、レーガンに任命されたのが、アンソニー ケネディと故スカリア
ブッシュパパに任命されたのが、クラレンス トーマス
ブッシュJrに任命されたのが、ジョン ロバーツと、サミュエル アリート
クリントンに任命されたのが、ルース ギンズバーグとスティーブン ブライヤー
オバマに任命されたのが、ソニア ソトマヨールとエレナ ケーガン

共和党の大統領に任命されたのが、4人。民主党の大統領に任命されたのが、4人。
しかし、アンソニー ケネディは中道的な立場を取ることが多く、
実際は、保守3:中道1:リベラル4人というリベラル優位の状態だ。

来年、トランプが大統領になれば、スカリア判事の後任に保守系の判事を任命することになる。
すると、保守4:中道1:リベラル4人の構成になる。
今の判事の中ではギンズバーグが最高齢で83歳。
ギンズバーグは、最高裁判事でありながら選挙中にトランプを激しく侮辱した。トランプはこれを法廷に対する侮辱行為に等しいとして批判した。その後、ギンズバーグは謝罪はしたが、これも自分の先が長くはないと思っていたからかもしれない。
おそらく、次にやめるのはこのギンズバーグだろう。
すると、トランプの代で2名の最高裁判事を任命できる可能性がある。
(その場合、保守5:中道1:リベラル3の構成になる。)
場合によっては、トランプの任期中に現在80歳のケネディも引退するかもしれない。とした場合、トランプは3人の最高裁判事を任命することになり、判事構成は保守6人:リベラル3人になる。
今のリベラル左派によるポリティカルコレクトネス運動のような言論の自由の抑圧は異常なものであるから、それを修正する上でも最高裁判事の構成は重要になる。

アメリカにおいては、連邦最高裁判事の意味は政治的にも極めて大きい。
ちょうど、レーガンの時に主席判事のレーンキストを任命することができたのは、大きな変化であった。
レーンキストのNew Federalismによって、ようやくF.D.ルーズベルトのニューディールコートからの流れが修正できたといえるかもしれない。

今回、トランプは、上院下院が共和党優位の状態で大統領になれるし、最高裁判事も保守系優位に戻せる可能性が高い。政治的にはよい条件で大統領になるので、やれることも大きくなる。
おそらく、トランプは2期8年、大統領をやるだろう。

オバマは何もできなかったし、碌なことはやらなかったが、その置き土産がこの最高裁の女性判事2人だ。
ソトマヨール62歳、ケーガン56歳とまだ若いので、あと20−30年は最高裁判事でいる可能性が高い。
最高裁判事は終身で基本辞めさせることはできないので、大統領は自分の影響力をできるだけ長く残そうとして若い判事を任命するわけだ。

来年は、このアメリカの連邦最高裁判事の人事が話題になる。

posted by libertarian at 07:08| 東京 ☀| アメリカ政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月22日

ロシアとアメリカの友好の意味

トランプがロシアに対して友好的なスタンスなのは非常によいことだ。
ミアシャイマーは、ウクライナとクリミアの問題の原因はNATO=EUの増長にあり、その非はNATOの側にあると考えている。
現在の共産主義を捨てたロシアは、冷戦以前の共産主義ソ連のような潜在的覇権国とはみなされない。実際問題、今のロシアの国力を示す経済規模は十分に小さい。
ミアシャイマーは、現在のヨーロッパにはロシアを含め潜在的な覇権国がない以上、これ以上、アメリカがNATOにコミットして拡大路線をとることに批判的であった。アメリカはNATOから駐留軍を引き上げ、ウクライナは今まで通り、干渉地帯として放置すべきである。

Why the Ukraine Crisis Is the West’s Fault
-- The Liberal Delusions That Provoked Putin
by John J. Mearsheimer
http://mearsheimer.uchicago.edu/pdfs/Ukraine%20Article%20in%20Foreign%20Affairs.pdf

そして、NATO=EUの増長を推進してきたのは、ほかならぬオバマ民主党であった。この間、ヒラリーが国務長官だった時には、テロまがいの介入をいろいろとしていたようだ。リビアやグルジア問題もアラブの春も、アメリカの工作があった。
もし、ヒラリーが大統領になっていれば、ロシアとの対決姿勢を強め、NATOの拡大路線も強化しただろうと考えられている。これは、かえってロシアとチャイナとの結びつきを強め、チャイナとイランとの結びつきも強めた可能性が強い。軍や警察は反ヒラリーでトランプを支持していたが、もし、ヒラリーがアメリカ大統領というアメリカ全軍の総司令官となっていたら世界は滅茶苦茶なことになっていただろう。そうならなくて本当によかった。大災禍は未然に防がれた。あとはヒラリーの重大犯罪を訴追するだけである。ジュリアーニには頑張ってほしい。

対して、トランプがロシアとの関係を友好にすることは、チャイナ包囲による有効な抑止になる。
日本とチャイナの周辺国にとっては、ロシアとチャイナが結託することが最悪の状況だから、トランプのロシアとの友好路線は大いに歓迎すべきことである。

ミアシャイマーのTheoryでいえば、現在の世界における潜在的な覇権国はチャイナだけだ。
だから、アメリカはこの台頭を阻止しなければいけないし、そのために軍事バランスを対チャイナシフトしなければいけない。具体的には今までNATOと中東に投入してきた軍事力を対チャイナシフトに転換しなければいけない。
チャイナ周辺国の間は地理的な距離がかなりあり、有効なチャイナ包囲網(バランシング同盟)を取りずらい。アメリカはこれらを結びつける糊のような役割をする必要があるというのがミアシャイマーの考えだ。
このバランシング同盟の要がアメリカと資本主義国ロシアとの友好関係なのである。

トランプの登場で、アメリカの戦後70年以上続いてきた、ダブルコンテインメント戦略、つまり日本を瓶の蓋にしつつ、旧ソ連と日本の両方を封じ込めるといったアメリカの基本戦略もようやく大きく変わる可能性が高い。

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2016年11月18日

24とカタカナ英語

オバマ民主党政権時代、ヒラリーが国務長官だった時は、ほとんど24(Twentyfour)の世界だったようだ。
当然にヒラリーが悪党である。FBIが投票日前に決死の勝負にでて、国民にヒラリーの凶悪性を警告しなければヒラリーが538の予測通りに当選していた虞が強い。

ということを思っているうちに、24をまた観たくなった。
ドラマ24はシーズン8で終わったが、シーズン2を先日見直した。
10年くらい前に見たので、細かい所は忘れている。また今回はClosed Captionの英語字幕で見た。
発音が聞き取れなくても、英語字幕があれば大体何を言っているかは分かる。
しかし、少しでもスラングな表現が入ると全く分からなくなる。

日本人の平均的な英語能力は悲惨なレベルで、日本人の英語べたは世界的にも有名である。日本人の英語はジャングリッシュと呼ばれ特別扱いされているそうだ。w
これは、学校教育の方法論が根本的に間違っているからである。これほどひどい教育をしていても、一切の責任が問われないのだから教師とは無責任な商売である。やはり文部科学省は廃止しなければいけない。
というのが、私のかねてから思っていたことであったが、先日、池谷裕二著「怖いくらい通じるカタカナ英語の法則」という本を読んで、我が意を得た。

基本的に、言語の音を聞き分ける能力は8−9歳までに完成するので、その後努力しても無駄であると書かれている。つまり、その後努力しても、聞き分けることのできない音はずっと聞き分けられないのが、脳科学上の悲しい現実なのである。著者は本職が脳科学者なので、そういう立場で書いている。
実際、日本語であっても訛りはなかなか抜けないし、まして外国語であれば、どんなにネイティブのように話してるようにみえても違うのだ。
またBとVの区別など、なんとか発声を分けることは出来ても、それを聞き分けることはそれでもできないらしい。
しかしだからといって、8−9歳になる前の早期教育で英語を教えるべしという話ではない。
そんなことをすれば、別のなにかがその分だけ教育できなくなるわけで、その弊害がでる。
間違いなくその分、日本語能力が劣ってくるだろう。

むしろ、江戸時代の人間のように、日本語で英語の発音をシミュレートするようにすべきだというのがこの本の主張である。

ジョン万次郎は、年をとってからアメリカに行ったので、当然に英語の音の聞き取りはできなかったが、見事に日本語で英語の発音のシミュレートをしていた。
例えば、What time is it now?を「掘ったイモいじるな」とするなどだ。
White shirtsをワイシャツとよんだ昔の日本人は賢かった。ホワイトシャツでは通じないが、ワイシャツなら今でも外国人に通じる。

これが今の日本の英語教育では、あちらの発音を無理やり発声させようとする。舌と歯の位置がどうのとか、唇の形がどうのこうのとか、日本人にできるわけもないことを強制するのが正しい英語教育だと思っているわけだ。
と同時に、What time is it now?の発音表記としては、リエゾンを完全に無視して「ふぁったいむいじっとなう」などと英語教本には表記する。
だが、この表記ではまず通じない。一方、「掘ったイモいじるな」をストレートに読めばそれで通じる。

つまり、英語の発音を江戸時代のジョン万次郎のように、カタカナでシミュレートすることは十分に可能であり、日本人はそのようなリエゾンや音の省略までをも再現したカタカナ発音を教えるべきなのである。
そして、そのようなカタカナ発音ができるようになれば、英語の聞き取りもできるようになるのである。

この本で読んでいたので、24をCCで見ながら英語について考えていた。
24の場合、大統領官邸の場面が多く出てくるし、CTUもエリート部隊であるから、そんなにスラングはでてこないし、どちらかというとフォーマルな英語なのだろう。だからわりと分かりやすい。だが、人によって聞き取りにくい発音は結構ある。私にはミッシェルの発音など分かりにくい。
また簡単な単語しかでてこない文章でも意味がぱっと響いてくるという感じにはならない。

つまり、日本語をきく場合、
日本語→分かる。となるが、英語の場合、
英語→日本語→分かる。 と、日本語がバッファーとして入るくせがついてしまっているのだ.
ここで、分かるとは何かが問題だ。
基本的に、会話言葉は相手があるものなので、分かるとは相手の気持ちと意図の理解が基本だ。
つまるところ、相手の気持ちを理解しようという気持ちで聞いていると、この日本語バッファーが少し小さくなってくる感じがする。また実際そういう気持ちで話を聞かないと、外国人がわけのわからん奇声を発するエイリアンのように思えてくるのだ。

最後に、池谷氏の本の発音の例を少し載せておく。
なお、このカタカナ発音表記には、ちゃんとルールがあるのである。

I want you to →あいわにゅる
Do you mind if I open the door?→じゅまいんでふぁい おうぺなどあ?
Nice to meet you →ないすとみーちゅ
Good afternoon → ぐらふとぬーん
Good morning → ぐっもーねん
You are welcome →ゆおうぇうくむ
Not at all →ならろーう
Thank you →てんきゅ
Take care →ていけお
How are you? →はおゆ?
I've got to go →あいがーらごぅ
a couple of minuites→あかぷらめねつ
What is up? →わつぁ?
I need a cab → アイニーラキャーブ
I am getting off →アイムゲリンガフ
Take it easy →ていけりーずぃ
Say it again →セイーラゲイン
Are you sure? →オユシュオ?
I am not sure →アイナッシュオ
I didn't know that → アイディンーノウダーッ

怖いくらい通じるカタカナ英語の法則 ネット対応版 ネイティブも認めた画期的発音術 (ブルーバックス) -
怖いくらい通じるカタカナ英語の法則 ネット対応版 ネイティブも認めた画期的発音術 (ブルーバックス) -
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定款としての憲法

アメリカ合衆国の歴史は短いとはいえ、独立前の期間も入れると実はそれほど短くはない。
独立(1776年)からは240年だが、アメリカ入植を日本で関ヶ原の戦いがあった1605年くらいとして数えれば400年以上ある。
日本では、アメリカ史やアメリカ法に関する碌な本が私の知る限りないが、その中で阿川尚之氏の著書は別格である。「憲法で読むアメリカ史」は名著であったが、先日、最新刊の「憲法改正とは何かーアメリカ改憲史から考える」を購入して読んでいる。全部は読んでいないが、この本も前著に負けず劣らずの名著である!

この本は、アメリカ憲法の成立過程から改憲の経緯を書いたものだが、ほとんどの日本人が知らないだろう空白のアメリカ独立前史からのアメリカ憲法の成立過程を分かりやすく説明している。
私も入植から独立までの160〜170年の期間がどういうもので、どういった経緯で憲法の制定に至ったのか具体的なことを調べようとしたことはあったが、日本ではまともな本が見当たらず、積年の疑問であった。
ハイエクの「自由の条件」は、アメリカ憲法の本質について書いたものだが、歴史的な事実関係が分からない。おそらくハイエクもあまりちゃんとは知らなかったのだろう。w
だが、この本を読んで、かなりすっきりと分かってきた。

この本から、アメリカ前史から憲法制定に至る経緯を簡単にまとめておこう。

1.株式会社型植民地
アメリカの植民地の大半は株式会社として発足し、定款を有していた。その代表がバージニア植民地である。
植民地人は従業員のようなもので、定款や経営に関して発言権は当然になかった。
しかし、バージニアの総監(国王に委託された子会社の社長のようなもの)は、移住者をさらにつのり士気を高めるため代議員会議を作らせた。

同様にマサチューセッツ湾会社の植民地では、会社の定款はそのまま植民地の憲法として用いられた。マサチューセッツ湾会社では、自分たちの信仰に基づく共同体を築くために勅許を得て作られた。バージニアの会社の出資者はイギリスに残ったが、マサチューセッツ湾会社では出資者もアメリカに渡ったという違いがあった。

重要なポイントは、株式会社として発足した植民地では、当初は本国イギリスのコモンローは適用はされなかったということだ。植民地は本質的に王の所有物であり、「王の法」が植民地の法に優先した。つまり植民地の住民は会社の従業員のようなものなので、会社のルールに従うだけだった。

#ちなみに、定款とは国王から与えられた勅許状のことである。これには、会社組織と運営の大綱を定めていた。本拠地はロンドン、総督(governer)という社長を置き、総督と投資家からなる諮問委員会(council)は総会を開く。植民者はこの会社と契約を交わして新大陸に渡った年季奉公人である。

2.社会契約型植民地
プリマス植民地では、メイフラワー盟約に基づいて作られた。彼らは国教会の権威を認めないピルグリムズという信仰集団だったのでイギリスでは迫害されており、それを逃れてアメリカに理想的な共同体をつくろうとしていた。しかしプリマス植民地でも、株式会社型植民地の定款を基に法律を作った。

3.封土型植民地
メリーランド植民地では、株式会社型ではなく、国王が臣下に植民地を領土として与え、絶対的な独占的所有権と統治権を領主が持っていた。しかし、この形の植民地も住民の協力がないと経営ができなかったので、植民地議会と会社型の統治機構を採用するようになった。

4.フレンチ・インディアン戦争(7年戦争)
フランスとのこの戦争でイギリスは、多大の戦費を使い、獲得した領土管理のためにも多額の資金を必要とした。イギリス本国は、この負担を戦争の最大の受益者である13植民地に対する増税によって求めた。
しかし、彼らは本国議会に代表を送ることが許されていない。代表なくして課税なし。ボストン茶会事件などを経て1775年独立戦争が始まる。しかし、13植民地は必ずしも独立を望んでいたわけではなく、課税をやめ、自治権を認めてくれればよいと思っていた。
だが、トマスペインの「コモンセンス」などで独立しか道はないとアジられ、独立に進んでいく。

そして13の植民地が平等にイギリスからの独立を果たすが、アメリカ合衆国という国の形はまだ何もない状態だった。13の共和国が独立したわけだが、かえって総督という対抗軸を失った議会は権力の濫用に走り政治混乱が起こった。
13国の同盟に連合規約はあったが、それらは条約であり、独立後に安全保障、通商政策、通貨管理などをどうするかという問題があった。
これらの問題により、新しい国のかたちと憲法を必要とする気運が生まれる。
アメリカ憲法は、「より完全な連合を築くために」制定された。


以上、少し詳しく纏めたが、要するにアメリカの植民地なるものは、大半が株式会社組織であり、各州が議会や法律を勝手に作り自治はあったが正式に認められたものではなかった。そして各植民地の法律は定款をベースに作られた。
アメリカ独立戦争は、これら株式会社が正式に国としてイギリスから独立する運動であった。
独立により、従来から運用していた各植民地の自治的な組織、法律や議会がイギリスから承認されたともいえる。
しかし、この時点では、13国の同盟でしかなく、アメリカ合衆国ではなかった。
その後、アメリカの国の形と憲法が作られていく。
憲法改正とは何か: アメリカ改憲史から考える (新潮選書) -
憲法改正とは何か: アメリカ改憲史から考える (新潮選書) -
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2016年11月13日

藤田嗣治の時代

今、府中市美術館で藤田嗣治の展覧会をやっている。 (12/11まで)
(同時に、千葉の河村記念美術館でも展覧会をやっている。1/15まで)
私は府中市美術館での展覧会を先日見てきたが、なかなか充実していて面白かった。

藤田嗣治は、日本で最も世界的に成功した画家と言えるだろう。藤田は1886年生まれ(今年で生誕130年)。
年譜では藤田の父は軍医の藤田嗣章と簡単に書かれることが多いが、藤田嗣章は森鴎外の後任の陸軍軍医総監となった超大物である。これは中将相当のトップになる。

そういう名門の家に生まれ、1904年の日露戦争時には18歳、1914年の第1次大戦時には28歳だったわけだから、日本が大東亜戦争に負けるまでの破竹の勢いのあった頃の日本、ある意味一番いい時期の日本で育った人間だったといえる。

藤田はフランスで大成功し、一財産を築いた。日本に帰国後は、大東亜戦争時には、超大作の戦争画を描いた。
展覧会でも、「アッツ島玉砕」などの3作が展示されていた。巨大な絵で、とてつもない力作である。
こういった作品は、将来は国宝として扱われてもよさそうなものである。
藤田は、rising sunの画家であったから、これはまさに藤田の集大成ともいえる画業だろう。

だが、戦後は藤田の戦争画は、戦争協力行為として一転批判されるようになり、藤田は嫌気がさして再度フランスに渡り、そこで一生を終える。(1968年)

藤田嗣治に興味を持って何冊か本を読んでみたが、なかなか面白い。林洋子氏の「藤田嗣治 手しごとの家」「藤田嗣治 本のしごと」といった本を見ると、この画家の全体像が見えてくる感じだ。
特に藤田の展覧会に行ったときに注意してみるべきは、額縁である。私は額縁が面白いと思って興味深くみていたが、藤田作品の額縁の多くは藤田のDIYによる手作りである。このことは林洋子氏の本で後で知った。
藤田の作品は絵と額縁のセットで見るべきものである。画集だと額縁はうつっていないので展覧会には額縁を見るためだけにも行った方がよい。w
藤田はDIYの走りともいうべき画家で、なんでも手作りしている。

20世紀の現代史を藤田という傑出した画家の生涯に沿って眺めてみると、その時間感覚と時代感覚がなんとなく分かってくる気がするのである。
posted by libertarian at 10:23| 東京 ☀| et cetera | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月11日

トランプの圧勝

トランプが劇的な圧勝をした。
今のところ、トランプが290で、ヒラリーが228だから接戦とも言えない圧勝だった。
FiveThirtyEightの予測では、ヒラリーのほぼ勝ちだったので、トランプはダメかと思っていたが、選挙は蓋を開けてみないと分からないものである。このネイトシルバーのサイトの過去の的中率は凄いが、今回、これだけ大きく外したのはなぜなのだろうか?

私はレーガンが大統領になった時の選挙を少し覚えているが、当時のレーガンに対するマスゴミの攻撃は今のトランプに対する態度とよく似たものであった。
レーガンによって共和党のリバイバルが起きたように、今回もそうなるだろう。

トランプに関しては、藤井厳喜氏や、江崎道朗氏などが肯定的な本を書いていたが、トランプが何を考えているかは、本人の書いた「Crippled America」の翻訳「傷ついたアメリカ」を読むのが一番よいだろう。
トランプは啓発本を今までも書いてきたが、トランプの問題意識やパッションが伝わってきて面白い。
この本の中で、トランプはメキシコとの国境に万里の長城のようなものを作ることを、比喩でなく本気で書いているように見えるが、やはりそれは比喩なのである。w

この本を読む限り、それほど保護主義的な主張があるわけでもない。移民問題、教育問題、医療問題、銃規制問題、経済、税制問題について、トランプの問題意識が率直に分かりやすく述べられている。
私はその多くに共感できた。

トランプの公約の中でもおそらく真っ先に実行するだろうことは、オバマケアの廃止だ。
また、この本に書かれているわけではないが、ヒラリークリントンのeメール問題とクリントン財団の問題は今後、追及されていく可能性はある。今まで、政治的に抑えられていたものが取り除かれれば、FBIも当然に解明に動くだろう。
ヒラリーが国務長官時代に独断で実行したリビアのカダフィ暗殺と、リビアの政府資金の国外持ち出しなどの犯罪行為(ベンガジ事件)は、eメール問題と同じ問題だ。ヒラリーはこれらを私的メールサーバーで指令していたそうだ。
トランプは、ほんとにヒラリーを牢屋に送る可能性はある。(とはいえ、これらは、警察と検察と裁判所が判断する問題ではあるが。)

オバマ民主党時代の負の遺産の清算がこの先、進むだろう。

ミアシャイマーが次期政権に向けて書いたろう提言論文"The case for Offshore Balancing"
http://mearsheimer.uchicago.edu/pdfs/Offshore%20Balancing.pdf
であるが、トランプがこの路線、オフショアバランシング戦略への回帰の道を進むかは分からない。
だが、やはり、それを期待する人はいるようだ。
National Interestの次の記事を書いたのはオーストラリア人だが、トランプがオフショアバランシング戦略へ転換することを私同様に期待した記事である。
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/why-donald-trump-should-embrace-offshore-balancing-16661

posted by libertarian at 16:24| 東京 ☀| アメリカ政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月05日

丸裸の日本

飯柴智亮著の「金の切れ目で日本から本当に米軍はいなくなる」を読んだ。
筆者の飯柴氏は元アメリカ陸軍大尉で国際関係論の博士でもある。

日本に戦後70年以上、ずっと米軍は駐留しているわけだが、あまりにも長いこといるおかげで空気のような存在となっており、一体、彼らが何をしているのか、何を考えているのかなど軍事オタクでもなければ気にもしていないだろうが、この本を読むと、その軍事的な合理主義が少しわかる。
軍事というのは、科学のようにきわめて合理主義的なもので、主観や人情といったものは介入する余地がない。生死がかかっているので、必然的に超合理主義的になるのであろう。

ここから少し抜粋しておくと、

・ミサイルディフェンスの基本は、発射前の段階で発射させずに潰すこと。
・陸自は全く無用の長物であり、これを全廃して戦略ミサイル部隊にする必要がある。
・戦略ミサイル部隊とは、射程3000−4000kmのミサイルを1000基装備した部隊。
・国産ステルスX-2心神はエンジン出力が足りず、そのためミサイルを格納搭載できない。実は全く意味のないステルス戦闘機である。→ミサイルを外付けにするとステルス機ではなくなるから。
・誰が国家機密に接触できるかの基本であるセキュリティクリアランスのシステムが日本にはない。日本の国会議員はアメリカ基準ではこのクリアランスを取得できない。
・日本の自衛隊空軍の任務は、嘉手納、岩国、横田、三沢の分軍飛行場を守ることにあり、日本の防空ではない。
・海自の任務は、米第7艦隊を守ることにあり、掃海と潜水艦の哨戒がその役割。
・海自にイージス艦、対潜哨戒機の比率が非常に高いのは、米空母を守ることが海自の主な任務だからである。 海自は第7艦隊の外堀の役割に過ぎない。
・2016年3月に来日したメルケル首相が安倍首相にこういった。「日本がNATOに加盟して何が悪いのか?私は、イギリスとフランスを説得できる。」
・日本で米中大戦争があって、日米同盟があったとしてもアメリカが日本に残ってほしいのは2か所のレーダー基地と横須賀、佐世保の港湾施設だけ。他が全滅しても構わない。
・現在の在日米軍は総計45000人。沖縄に2万人。本土に25000人。20年前は10万人いた。
・米海兵隊の敵は、昔はソ連、今は支那。第1撃で全滅する可能性の高い沖縄に海兵隊がいても無駄。海兵隊は沖縄から完全撤退する可能性がある。この点において基地問題で騒いでいるのは意味がない。
・日本人は、水と安全と在日米軍はただと思っている。

実際、日本の自衛隊は軍隊ではない。それは法律上、警察の延長にある組織にすぎず軍法もない。またここが重要な点だが、自衛隊の主な任務は日本人と日本の国土の防衛ではなく、日米安保条約に基づいて在日米軍と在日米軍基地を守ることにあるのである。
日本はアメリカ軍がいなければセキュリティ的に丸裸の状態だが、アメリカは自国の国益にかなった合理主義で動くだけだから、日本の防衛のために動くことはない。
もし米軍が台湾から撤退したら、その翌日に支那は台湾に攻め入り、あっという間に台湾を占領し、次の日には沖縄を占領する。こういった軍事行動はこのくらいのスピード感で行われると予想されている。
日本は憲法9条の封印を解き、第2の開国を成し遂げなければ支那の餌になる可能性が非常に高いのである。
そのためにも、トランプが大統領にならないと日本の近い将来は真っ暗といえる。
もしクリントンが大統領になったら、日本はほんとにやばい状態になりそうだ。そして今のところ、その最悪の可能性はかなり高い。

posted by libertarian at 00:03| 東京 ☀| et cetera | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする