2009年09月20日

Abiogenic Origin of Oil Gas Coals

 ロバート アーリックの本「Nine crazy ideas in science」の翻訳「とんでも科学の見破り方」を図書館で借りて読んだ。
実はこの翻訳本のタイトルこそトンデモで、原著はPrinceton Univ Pressから出ている真面目な科学啓蒙書である。おまけに売らんかなのタイトルのわりに翻訳もこなれておらず読みやすい文章とはいえない。

1章は、あのFreedomnomicsを書いたJohn Lott Jrの”銃を普及させれば犯罪率は低下する?”を検証しており、これは間違っている可能性が高い(3 cuckoo)としつつも、それを否定する自説も間違っている可能性がある(2 cuckoo)としている。ちなみにこのLottの論文は1980年代後半に発表された旧いもの。なお、現在、Lottは銃規制賛成派である。

しかし、この中の7章で説明されているトマス ゴールドの石油惑星起源説の解説が圧巻だ。
もちろん、作者のアーリックはこれを間違っているとして取り上げているのではなく、おそらく正しい理論だ(0 Cuckoo)としてきわめて肯定的に詳しく紹介しているのである。
思いおこせば、私がこのゴールドの石油惑星起源説を知ったのは20年位前のことで日経サイエンスの記事であった。私はこの石油惑星起源説=Abiogenic Origin説を知って興奮を覚えたものだ。
トム ゴールドは、アメリカの著名な超一流の理論天体物理学者であり、電波天文学の研究者でもある。Pulsarが中性子星であることを理論的に示したのもゴールドだ。ジャンルを問わない研究領域で先進的な研究を行い、その研究の多くは30−50年後に正しいことが証明されることになる革新的な研究成果を出した人物だ。例えば、地球の地軸が90度ひっくり返る現象を唱え、これは発表後の40年後に、カンブリア紀に実際に起こったことが岩石の磁気履歴から明らかになった。カンブリア紀の生物大爆発は、地軸がひっくり返ることで気候条件もひっくり返り、環境が激変したことで起こった生物の大規模な適応変化だったのである。
人間の聴覚メカニズムに関する研究も行っており、特定の周波数に対応する器官があることを極めてクールな実験で論理的に示した。しかし、ゴールドのこの研究が正しいと認められたのも40年後のことである。
ゴールドの本を読むと、化学に対する、非常に深くかつ鋭い洞察があることもよく分かる。そこらの化学者の比ではなさそうだ。
ゴールドは、万能の天才タイプの学者のようだ。

その後、ゴールドの説は証拠が集まり、ますます信憑性が高まってきた。それに比べて石油や石炭が植物など生物の死骸堆積物が起源だとする説の方こそが、むしろトンデモ仮説にすぎないという感を強くしつつある。こんな1870年頃に出来上がった拙い仮説が未だ学会の主流にあるというのは、かなり奇妙な感さえする。石油会社にとっては、石油が無尽蔵に近くあるという説はやはりありがたくないのであろうか。

そもそもゴールドが言うように地球も惑星の一つなのだから、地質学は本来、惑星科学に含まれるものだ。
おそらく、生物起源説に対するゴールドの惑星起源説(Abiogenic Origin theory)は、少し前のウェゲナーの大陸移動説に相当するだろう。
今では、大陸移動説は”当たり前の事実”のように思われているが、ほんの30−40年程前の当時の頭の固い連中にはトンデモ説以外の何ものでもなかった。おそらく近い将来、ゴールドの説が市民権を得るだろう。
#さらにゴールドは、生命起源について地球深層起源説まで唱えている。天体物理学者だけあり巨視的なパースペクティブがありダイナミックだ。
なお、この石油の起源が地下深層ガスにあるという説は、ロシアでも独自に発展していた。というかゴールドが独自に発展させたといったほうがいいのかもしれない。

このゴールドの理論は、その論証と反証のプロセスが科学的でスリリングであり、ためになるので、アーリックのまとめている、ゴールドが唱える炭化水素の生物起源説の反証かつ惑星起源説の傍証となる15の論点について、ここにさらに簡単にまとめておこう。

1.原油は生物起源説にそぐわない化学成分を含んでいる

2.堆積物に化石が見られない場合が多い
 石油は多くの場合、まったく化石のない堆積物中で見つかっている。

3.深部の石油には生物の痕跡がない。
 非常に深いところから得られた石油の化学成分は、浅い堆積鉱床の石油に見られる生物起源の証拠をほぼ欠いている。深部の石油は生物起源ならあるはずの光学活性が全くない。

4.石油には地域による化学的特性がある。
 もし石油の起源が各地域の堆積物にあるのなら、堆積層の年代に大きな差があるのに、なぜ地域に共通する特性が生じたのかを理解できない。逆にすべてマントル深部にある共通の供給源から染み出してきたものとすれば容易に理解できる。

5.石油と天然ガスは多くの場合、長い直線状、弧状の地域に発見される
炭化水素の世界的な分布も、非生物起源の証拠になる。

6.どんな深さにも炭化水素が見られる
 ゴールドがスウェーデン政府を口説いて地下7.6Kmまで掘削したところ、どこにも堆積物のない基盤岩の裂け目の中に石油がみつかった。変成岩の裂け目の中に発見された石油はより深い層からきたものでしかありえない。

7.メタンが生物学的にありえないような場所で発見される
 メタンが太陽系のいたるところで見られるが、特にメタンハイドレートとして海洋底や永久凍土層の中に存在している。火山の爆発もメタン爆発であり、これはメタンの起源がさらに深層から来ていることを示している。

8.ガス田の表層土壌はメタン含有量が極めて多い。
 土壌中の高濃度のメタンはどんなガス田であれ数千年で枯渇してしまう量である。何百万年前に堆積物中でできたものとすれば、これは説明のできない量である。メタンガスが地球深部にある貯留層から上に染み出してくるとすれば、土壌中の高濃度メタンは容易に理解できる。

9.ヘリウムはつねにメタンに付随して見つかる
 ヘリウムは必ずメタンとのさまざまな濃度の混合物になっている。
ヘリウムはウランのα崩壊によって生成されるが、地表に達したメタン中のヘリウム濃度は、メタンが生じた深さの指標になる。メタン中の高濃度ヘリウムはメタンが堆積層の深さよりはるかに下の深層部から上昇してきたことを示している。

10.深部の岩石は上下に隔てられた領域内に細孔を保持できる

11.油層は自然に再び満ちてくる
 原油をくみ上げても再び石油が満ちてくることがある。その結果、石油埋蔵量の見積もりが著しく過少になることもある。炭化水素が深部にあればこの現象を説明できる。

12.ダイアモンドの存在
 ダイアモンドの存在は150-300kmの深さに純粋な炭素があることを示す。炭素の分離が連続的に生じるのは、炭素を含む液体が他の元素を化学反応によって選択的に除去できる岩石の細孔を通って流れる場合に限られる。
地球深部でできたダイアモンドがその構造を保てるのは、急冷された場合のみであり、それ以外はグラファイトに変わってしまう。このためダイヤは爆発的なガス噴出の結果として地表近くにできる円筒状のパイプ鉱床で発見されることが多い。

13.地球の表層は極めて炭素に富む
 これらの炭素の大半は炭酸塩鉱物の形で存在する。200000kg/m2であり、これを炭化水素生物起源説は全く説明できない。炭素循環でも説明できないし、また炭素同位体の構成からしてもありえない。

14.メタン内の炭素同位体の存在比は地下の深さによって異なる
 メタンを構成してる炭素同位体の存在比にみられるパターンはメタンが地下深部説と符号する。
気体のメタンでみられるC13の減少レベルの範囲が石油の場合のほぼ10倍になっていることは、その原因が生物学的なものでな拡散にあることを示している。生物学的であれば同じになるはずだからである。
より深部のメタンほどC13の減少度合いが小さいが、拡散によって取り除かれる量が小さいからである。
データ調査を目的とした非常に深部のガス田から得られたメタンですらかなりのC13減少がみられるのは、メタンの供給がさらに深いところにあることを示唆する。

15.炭酸塩における炭素の同位体の存在比は一定
 地球上に植物が急速に広まったシルル紀においてすら、炭酸塩鉱物のC13比率は変化がない。炭化水素の堆積層は埋もれた植物に由来するのでなく、非生物起源のものとするのが唯一可能な説明である。

また、近年の深部ポーリング探査の成功率は70%ときわめて高く、これも炭化水素が深部にいたるところにあるとするゴールド説と符合する。
太陽系のほとんどの惑星と、さらに惑星の衛星でも大量の炭化水素の存在することが電波天文学のスペクトル分析で分かっている。

以上は、長くなるのでかなりはしょっており、これだけ読んでもわからないだろう。
英語で読める参考URIとして以下を挙げておく。

Thomas Gold on Wiki
http://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Gold

Abiogenic petroleum origin
http://en.wikipedia.org/wiki/Abiogenic_petroleum_origin

無機起源石油、天然ガスが日本を救う
(2005年のレポート)
posted by libertarian at 19:26| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | et cetera | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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