2005年05月13日

技術標準と競争政策

技術標準と競争政策

[http://www2.jftc.go.jp/cprc/seminar/03/3report.html]



これは公正取引委員会のセミナーである。

最初に発表した二人の大学の先生の発表はつまらないし馬鹿らしいが、本間忠良氏のコメントは

なかなか気が利いている。

PDFで内容が全て読めるから、後ろの本間氏のコメントから読むのがよい。



以下は本間氏のコメント。少々長いが引用しておく。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「今,お二方のレクチャーを拝聴しながら考えていたことは,一般的な標準化作業とパテ

ント・プールがどういう関係に立つのだろうかということです。例えば,VESA やJEDEC の

ような標準設定の活動と,MPEG2 のようなパテント・プールは,どうも単に並存している

だけではなさそうだという感じが,今お話を伺いながらしてきました。これは,どうも発

展段階説があてはまるケースのような感じがいたします。



複数事業者の共同行動による技術標準の設定,デル事件のVESA やラムバスのJEDEC のよ

うな標準の設定というのは多かれ少なかれ,一般にアンチパテント的なポリシーを出発点

にしていたわけです。なるべく特許を無償でライセンスしなさい。無償でなくてもRAND

条件でやりなさい。どうしても嫌だというのなら,その標準は廃棄しましょうというわけ

です。和久井先生は「そんなのは無理だ」とおっしゃいましたが,たしかに無理ですよね。

ここでアンチパテントというのは,特許だけのことを言っていません。要するに,アンチ

知的財産権的なポリシーを出発点にしていたのです。



ただ,そのようなポリシーというのが,だんだん破綻してきていたわけです。どうして

かというと,まず裏切りを止められない。インサイダーのほうからいうとデルやラムバス

は裏切り者なのですが,裏切りを止められない。例えば「除名すればいいじゃないか」と

言いますが,ラムバスなどは自分から脱退したのですから,喜んで出ていってしまうわけ

です。それから,私が経験した事件でワング事件というのがありました。これもJEDEC の

事件ですが,ワングも自分で脱退してしまっているわけです。だから,除名するなどとい

う制裁は,多分何の役にも立たないでしょう。



つぎに,これもお二方のお話の中にありましたが,RAND 条件のR,リーズナブル・ロイ

ヤリティーなんて,どうやって決めるのか。決められませんよ。不可欠施設の使用料だか

ら,理論的には使用者の全利益を剥奪するところまで行くでしょう。「第三者に決めさせ

ろ」というのは強制実施権のことでしょうか。R が市場原理で決められないというような

こともあって,JEDEC やVESA のようなタイプの技術標準というのは次第に限界に来ていた。

それで,技術標準が次第に知的なモノポリ−,つまり知的財産権によって分割されること

を止められない状況になってきている。先ほど和久井先生が,「暗い話だ」と最後におっし

ゃいましたが,私もそのとおりだと思うのです。そういう古典的な技術標準の設定という

のはだんだんむずかしくなってきていると思います。



では独禁法が補強しよう。これも多分駄目ですね。3条前段は裏切り者を罰する手段と

してはとても使い物になりません。リーズナブル・ロイヤリティーの強制裁定もできませ

ん。結局そういう状況の中で,次善の策としてパテント・プールへの道が探られてきたと

いう発展段階説で私は考えているのです。



ただ,パテント・プールにも有力なアウトサイダーがいるのです。先ほど,長岡先生が

パテント・プールの例を挙げてくださいましたが,例えばこのMPEG2 にしてもDVD にして

も,非常に有力なアウトサイダーがいるのです。それから3G,これは携帯電話ですが,こ

れにしてもクアルコムという有力なアウトサイダーがいる。これには,もともとアウトサ

イダーだったものと,それからラムバスやデルのようにもと裏切り者のアウトサイダーが

います。裏切り者と言ったら申し訳ないし,言葉としては極端ですが,そういう,契約によ

る標準策定から飛び出してできたアウトサイダーのことを便宜上そう言っています。



今,私が見聞しているパテント・プールは,外にアウトサイダーのナポレオンがいて,

こちらが対仏大同盟みたいなものを結成して対抗しようというのが本音だと思います。公

取委に出すパテント・プールの趣意書にはこんなことは書きません。けれども本音は対仏

大同盟か特許被害者連盟みたいな発想がベースにはあると思っています。以上すべての段

階で独禁法上のいろいろな条項が関連してきます。3条前段,後段,10 条,19 条。逆の意

味で21 条なども作用してくるわけです。ただ,私の観察というか邪推というか,3条前段

が私的独占,後段がカルテル規制なのですが,後段のほうがはっきり言って使いやすいの

です。アメリカだったら,per se illegal です。日本にはper se illegal はないのです

が,実質的に独禁法はカルテル規制のほうが使いやすくて,私的独占規制というのは使い

にくいのです。



そのためにどうなるかというと,日本の独禁法はパテント・プールのほうに厳しいのです。

「パテント・プールはカルテルではないか」と言って,疑いの目で見る。そしてアウト

サイダーの技術モノポリストに対しては,本当は私的独占でおさえたいのだが,歯が立た

ないという状況です。この対仏大同盟対ナポレオンという状況に対しては,公取委がやる

気になればなるほどパテント・プールのほうに厳しくなっていってきます。そして,アウ

トサイダーの大物に対しては何の手も出せないというような状況が,むしろ事態を深刻化

しているのではないのでしょうか。



例えば,独禁法第8条の4という,水爆みたいな究極兵器があります。これは使われた

ことがないばかりか,これを不可欠施設に限定して,しかも競争下で獲得した不可欠施設

は免責するという方向で改正する提案があるようです。つまり,8条の4という究極兵器

は25 メガトンの水爆みたいなものなので,とてもじゃないが使えない。それを分解して戦

略核ぐらいに小型化しようという発想なのですが,その隙間を縫って知的財産権を聖域化

しようという動きがあるのです。



だからそういう意味では,真に重要な問題というのはパテント・プールのカルテルの問

題ではなくて,おそらくその外にいる大物の技術モノポリストに対して独禁法で何ができ

るのかという課題なのではないかと私は思っています。現在の独禁法では知的財産権によ

る自然独占に対しては到底歯が立たないという状態なのです。だから多分,特別法が必要

なのではないかという気が私はしております。独禁法というのは一般法ですから,あと100

年ぐらいはもつので,状況の変化に応じてちょいちょい変えるなんていうことができない,



やはりこれは特別法の世界なのではないかという気がしております。

要するに,技術標準やパテント・プールなど考えもしないで立法された独禁法が,何と

かかんとかパッチワーク風にやっている。そのために,逆に問題をむずかしくしている可

能性があるのではないか。全く同じ適応不全が知的財産法のほうにも見られるのです。例

えば,強制実施権なんか全然駄目です。そういうようなことがあって,私は特別法を真剣

に考える必要があるのではないかと思います。例えば,時限法にしてもいいのです。こん

なものは長持ちする法律ではありませんから。このような私の感想をもって,コメントに

代えさせていただきます。漠然と考えているだけなので,私が間違っているのかもしれま

せん。」
posted by libertarian at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | IPR(Intellectual Property Right) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック