2007年01月04日

The ethics of liberty

この正月に、マレー ロスバードの「自由の倫理学」を再読した。
ロスバードのこの本は、森村進氏による優れた翻訳だ。
ロスバードの本は、このThe ethics of libertyの他に「Man,Economy,and State」、「For a new liberty」が有名であるが英語の原書はPDFでNETから全部手に入る。しかし是非、森村氏にはこちらも翻訳していただきたいものである。どちらもかなりの大著であり、私は今まで部分的に拾い読みをしたくらいだが今年はこれらを一通り完全読破してみようかと思う。

この「自由の倫理学」は、リバタリアンの、もしくは自由のPrivate Propertyに基づく基礎理論を打ち立てようとする野心的な試みの本だ。現在のオーストリアンリバタリアンは、ミーゼスとこのマレーロスバードをグルとするリバタリアン達なので、ロスバードの本はミーゼス同様に極めて重要だ。ロスバードのラディカルな考察は現代のリバタリアニズムのすでに前提となっているもので、ハイエクやフリードマンのような保守的な比較的漸進的なリバタリアニズムとは一線を画している。
実際、オーストリアンはハイエクやフリードマンの態度をしばしば攻撃する。
ロスバードが引用するアクトン卿の「自由主義は現状にかかわらず、あるべきことを欲する」 “Liberalism wishes for what ought to be, irrespective of what is.”という言葉は、この本の基調にある自由のラディカリズムのあり方を宣言しているものだ。

1部では、自然法から説き起こし、古典的自然法を政治的個人主義に基礎を置く理論へ変えたジョンロックの自然権理論を基礎として、ロスバードの自由のprivate property原理を展開する。
ロスバードによると「リバタリアンな自然権論は、ロック以降も拡大と純化を続け、19世紀のライサンダ―スプーナーとハーバートスペンサーの著作において頂点に達した。」
そして、20世紀のロスバードがこの本の中で自然権の理論つまりprivate propertyの理論を完成させようとしたのだ。

この本の第2部(自由の理論)はリバタリアンの原理(=principle of self-ownership)に基づく、私法の法理に対する再理論づけともいえる。少なくとも民法くらいは一通り知らないと、この辺りの論理の面白さはなかなか理解できないだろうが、私的財産権を原理として私法、刑法の原理を再構築しようとする試みは迫力がある。

「権利」をハイエク同様に消極的概念と位置付け、さらに権利の概念は財産権としてしか意味をなさないことを論証する。いわゆる憲法上の権利として金科玉条のごとくに言われる「言論の自由」も「知る権利」も、Positive rightsとしては存在しない。あるのは自分のものを自分で自由に処分する権利であり、あるいは他人と自由に契約を結ぶという意味での”財産権”だけだとする。当然、プライバシー権というPositive rightsも存在せず、財産権のみがあり、その財産権への侵害にいたる行為に対してのみプライバシー侵害に対してアクションが可能なのだ。

コモンローも多くの点で反リバタリアン的な欠陥があるとするが、たしかに今のTortsなどを見るとおかしな点が多い。一度原理に戻って再構築する試みは必要だろう。民法というのは歴史的な構築物である反面、アドホックなところがあり、特に財産権原理が不完全だということだ。
かつてミルトンフリードマンは、ロスバードを寛容性に欠けると言っていた。決してファナティックではないが、意識的に論理的にまた理性的にradicalであろうとしているのであろう。ロスバードが基礎付けしようとした原理はすでにリバタリアニズムの原理となっている。

#1920年代の禁酒法の擁護として、飲酒は犯罪を犯す確率を高めるから禁酒は人身と財産を守る防衛的行為だという議論があった。
ロスバードは、「一度、人身と財産に対する曖昧で将来の、明白で差し迫っていない驚異を持ち込むと、それはあらゆる種類の専制の言い訳となる」とし、そして、そのような独裁政治に対する唯一の防衛策は”認知される侵害の基準を明白で差し迫った公然たるものとして維持すること”にあるとする。昨今の”健康法”という名の禁煙法、反アルコールの動きは国連指令から来ているが、これが自由を破壊する専制に結びつくことはいうまでもない。なぜ、そんなことも今の人間は分からないのか。
ロスバードは、リバタリアニズムの将来に楽観的だと書いているが、私はまだまだ道は険しいと感じる。
posted by libertarian at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | M.Rothbard | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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