2015年09月14日

Triangulating Peace?

高橋洋一氏の平和の5要件に関する解説によると、

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44269
「ラセットとオニールによる"Triangulating Peace" は、国際政治・関係論の中になって、すべての考え方を統一的にとらえた最終理論のようにも思える。

@同盟関係については、対外的には抑止力をもつので侵略される可能性が低くなるとともに、対内的にはそもそも同盟関係になれば同盟国同士では戦争しなくなるから、戦争のリスクを減らす。

A相対的な軍事力については、差がありすぎると属国化して戦争になりにくい。

B民主主義については、両方ともに民主主義国だと滅多に戦争しないという意味で、古典的な民主的平和論になる。一方の国が非民主主義だと、戦争のリスクは高まり、双方ともに非民主主義国なら、戦争のリスクはさらに高まるので。アジアにおいて、中国とベトナムで何度も戦争しているが、まさにこの例だろう。

C経済的依存関係、D国際的組織加入については、従来のリアリズムから重要視されていなかったが、実証分析では十分に意味がある。」


ということだ。
ミアシャイマーのリアリズムのように、覇権大国の宿痾として戦争を捉えるのでなく、複数の要因で考えるということだろう。
しかし、このデータ1886年から1992年までの戦争データを使っているわけだが、イラク戦争のようにアメリカ側が侵略したものは入ってない。統計的に判断するにはデータが少なすぎるという気もする。

また戦争の規模も考慮されていない。地域紛争的なものから100万人以上の死傷者を出す戦争も1回にカウントされている。
また代理戦争といわれるものを、どうカウントしているかも疑問だ。
さらに支那のチベットやウイグルへの侵略と虐殺といった国家間紛争とはみなされない国内での侵略粛清もあるが、これは紛争にカウントされていないようだ。

また、複数の要因があるとき、その寄与度の大小が問題になるが、それに対する定量的な把握はされていない。
「軍事力は、@同盟関係をもつこと、A相対的な軍事力、カントの三角形は、B民主主義の程度、C経済的依存関係、D国際的組織加入という具体的なもので置き換えられると、それぞれ、戦争を起こすリスクに関係があるとされたのだ。」とまとめられるように、軍事力2要件、カントの3角形の3要件が両方寄与しているというわけだが、このうち、アメリカや支那の覇権的侵略行動を見ると、民主主義の程度が戦争の抑止になるというのは疑わしくなる。w

経済的依存関係については、わりと不安定で景気要因で経済依存関係は大きく変動すると思われる。
例えば大東亜戦争の前には、スムートホーリー法の保護主義から世界経済のブロック化が起こり、資源を持たざる国と資源を持てる国との対立が生まれた。
国際的組織加入といえば、国連や国際連盟が第1次大戦後に生まれたが、国連加盟国の多くが戦争を起こしている事実をどう説明するのだろうか?

統計的な処理の詳細以前に、いろいろ疑問があるが、結果的に、侵略戦争は、なんといっても相対的な軍事力の格差が最大の原因になっていると思われる。こう見れば、ミアシャイマーのリアリズム説になるだろう。

そして同盟関係は、相対的な軍事力の違いを小さくするためのもの、もしくは、同盟の総合的軍事力>どこかの一国の軍事力という圧倒的な軍事バランスを維持するためのものだ。

アメリカの場合は、冷戦後はあまりに突出した軍事力を持っていたため、現実的に軍事的同盟関係はあまり必要としていない。むしろ同盟は国際世論を敵に回さないための方便として用いられている。
ミアシャイマー的には、アメリカのような突出した軍事力をもつスーパーパワーが覇権国であり、覇権国になると覇権国の宿痾として拡大と侵略をするみたいな感じだろう。

支那とロシアと北は今の所、軍事同盟ではないが、歴史的にはお互いの利益になれば相互に一時的な同盟を組む可能性もある。
この点、日本は今後いかに防衛費を上げようとも、アメリカとの軍事同盟を組まない限り、これらの地域との軍事バランスをとることは不可能だ。

問題はアメリカは支那がアメリカに拮抗できるほどの軍事パワーになりつつある状況で、アジアの軍事小国との同盟関係で支那に対抗するメリットが少なくなるという点だ。
アメリカから見れば、支那と台湾や日本、フィリピンなどとの間の戦争リスクは高まっているが、そこに参戦するメリットがなんなのかという話だろう。つまり、当面はアメリカはスーパーパワーであるから、他国から侵略される脅威はほとんどない。
支那に対抗して軍事的覇権を維持することに伴うメリットはなんなのかがよくわからない。
かつてのソ連に対しては反共主義のイデオロギー的対決をしたが、今の支那に対する強いイデオロギー対立はない。

中東の石油にしても、アメリカの場合、マラッカ海峡をタンカーが通らないでも、湾岸ーパイプラインートルコー地中海ー大西洋経由でも送れるようにそのうちなるだろう。とすると、タンカーの通り道としての南支那海はアメリカにはどうでもよくなるかもしれない。
そもそも、今のアメリカの原油輸入ルートがどうなっているのかよく知らないが。。

5要素の寄与率を推定するに、やはり相対的な軍事力の違いが主要な侵略戦争の要因であると思われる。
特に支那のチベットやウイグルへの侵略とジェノサイドなど、これ以外では説明できないだろう.
現実問題、スーパーパワーを持った覇権国を裁くことのできる国や機関がない以上、世界は依然としてアナーキーである。
posted by libertarian at 20:39| 東京 ☁| Modern HIstory | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする