2015年12月03日

イスラム国とサウジアラビア:Islamic state and SaudiArabia

アブドルバーリ アトワーンの「イスラム国」を読んだ。
この本は、ロレッタナポリアー二の「イスラム国」よりも内容はずっと正確で深い。
監訳者が中田氏だが、中田氏が言う通り、現在はこの本がイスラム国関係の解説本では決定版だろう。
日本人の書いた本は何冊か読んだがろくなものがない。

中東問題が語られるとき、意外と論じられないのがサウジアラビアの存在だが、この本ではサウジの存在の意味についてかなり詳しく論じられている。サウジはワッハーブの国だが、ワッハーブ派はISと同じスンニ派の厳格主義で、サウジ出身の兵士はISに多く、アフガン紛争でも一番多かったようだ。
サウジはワッハーブ派の原理主義の輸出国でもある。アンケートをしてもサウジではISを支持する人が90%以上いるようだ。
しかし、ワッハーブ派を唱導しているくせに、当のサウジ王国そのものは、腐りきったもので、ISはサウジの支配層をタクフィールの背教者として認定している。将来的にはサウジ王家はISにより抹殺され、メッカ、マディーナがISの手中に落ちる可能性は結構あると思う。ISの最終目標はこのメッカ、マディーナの奪取である。
しかし、そうなったときはイスラエルも終わるだろうから、そう一筋縄では進まないのだろうが。

この本には厳格主義という言葉が使われているが、イスラームの武闘派には原理主義という言葉よりも厳格主義という言葉を使ったほうがよいのかもしれない。
あと、イスラームにおいて復古主義とはイスラム暦1−3世紀の頃に戻れというもので、これが厳格なイスラーム。伝統主義とは中世に戻れというもので、これはやや中庸なイスラームだ。
ムスリム同胞団などは、テロリスト呼ばわりされていたが、イスラームの中ではかなり穏健なグループである。

もともとサウジは広大な砂漠地帯で人の住むようなところではなかった。それでも内陸に隔絶した集落があり、そういうところで原始のイスラームが温存されたという経緯があるようだ。*そのワッハーブとサウド家が聖教盟約によってできたのがサウジアラビア王国。
*これは山本七平氏の話だが、加瀬英明氏との対談「イスラムの読み方」は日本人の本にしてはいい本だ。

ISのシリアーイラクの支配領域は広大で、そこには600万人くらいの人が住んでいるらしい。そこを無差別爆撃などしたら、東京大空襲と変わらない。また地上軍を投入するのも人的被害が大きすぎてアメリカはやらないだろう。
実際のところ欧米には大義もはっきりとした戦争目的はないのであるから、どこかで手を引くしかない。
動機があるとしたらイスラエルロビーの存在くらいか。だが、イスラエルも長期的には存続できないような気もする。
posted by libertarian at 00:12| 東京 ☁| Modern HIstory | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする