2007年06月01日

Copyright ,Patent,and Torts

デジタル情報化された著作物の著作権問題について少しまとめておこう。
著作権法というのは、従来はどうでもいいような法律とも思えないような法律であり、零細事業者(芸術家を含む)の利権を保護するための法律だったが、デジタルネットワークの発達によって当初の思惑に反してネットワーク技術、ネット産業の発達の最大の阻害要因となっている。

また、著作権法は、どの国でも産業政策的な位置付けにあるが、国によって法理論上の扱いが実は結構異なっている。
そのため、著作権法のあるべき姿を論じることは、知財専門の法学者にとっても容易なことではない。
現在の日本の裁判例は、東京地裁の高部コートによって多くの重大?判決がなされているが、実は、これらは現行法上はなかなかに良く考えられたものだというのが私の感想だ。
もちろん、それに全て賛成するわけではないが、一審の地裁レベルの判断としては、女性らしいなのか単なる性格のためか、制定法に実直に即した判断を行い、それ以上の判断は控訴審、上告審の判断に委ねようという意図があると推察される。

ネットワーク上の著作権侵害に関しては、直接侵害者の特定が困難であるために、間接侵害者に相当するかもしれないプロバイダーなどの責任が裁判上の焦点となっている。もし直接侵害者に対して裁判を起こすことができれば、本来、間接侵害者?の責任は問われない。つまり直接侵害者を訴えられないから、間接的な救済手段としてISPなどの責任が問われているのだ。
ここにまず、この問題の本質があると考えられる。
現状の裁判上の判断には、制定法上の権利救済を前提として、こういったプラグマティックな執行の実効性を確保しようとする意図があるわけだ。

次に情報の媒介者であるISPなどは、教唆、幇助として、著作権法112条1項の差止請求を適用(類推適用)できるかが問題の焦点となる。

情報の媒介者に対する、著作権法上の侵害責任を問うことは、日本においては1988年の最高裁判決によるカラオケ法理以来、固まっている。
クラブキャッツアイ事件では、侵害者である客と、媒介者である店に人的関係がある場合は、店側の管理・支配の程度が責任を問う基準とされた。
その後、ISPのような直接侵害者と媒介者の間に人的関係がない場合の、媒介者による”道具”の提供に対する侵害責任の判断手法が、昨今のネットワーク化にともなう難問として浮上しているわけだ。
当然ながら、ISPはサーバーなどの汎用装置を提供しているだけである。

また、常に必ず著作権法上の支分権の直接侵害となるわけではない場合、つまり侵害用途ではない使い方がある場合の判断が難しい。
アメリカでは、Sonyのベータマックス事件で、Sonyは辛うじて勝利したが、このときのビデオレコーダーが、この”侵害用途でない使い方がある場合”に相当する。
つまりビデオレコーダーは、タイムシフティング目的で、私的な利用がなされる。
Stevens判事は、タイムシフティング目的、つまり番組を時間をずらして私的に視聴する場合の利用はFairUseと判断し、なおかつ潜在市場に対する影響を証明する責任は著作権者側にあるとし、また著作権者側がその立証ができなかったと判断したためにSonyは裁判に勝利したのである。
(ちなみに日本ではFairUseの法理は一切ない。)

一方、アメリカのGrokster事件では、Grokster側の”特許法上”の教唆規定を認定したが、このような侵害しない用途を有する技術に教唆規定を適用すると、全てのISP、電話会社が著作権法上の侵害責任を問われることになるという批判がされている。

また、イギリスのOWEN事件では、Sony事件とは異なり、実質的な侵害用途が存在すれば、侵害しない用途があったとしても、侵害となるとした。
このようにイギリスとアメリカでも侵害判断の様式はかなり異なる。

大雑把に纏めるとアメリカの裁判においては、著作権侵害に対して特許法上の理論を援用しつつ、媒介者において、支分権の直接侵害が少しでもあれば当然にクロとされるが、媒介者が中立的で、かつその技術に侵害用途でない用途がある場合がグレーゾーンとなり、昨今の趨勢としては、そのグレーゾーンはブラック寄りに判断される傾向にあるといえる。

また、媒介者に対する不法行為上の差止請求がこれらの国では可能であり、全てを著作権法上の解釈で解決しなくてもよいという事情がある。

一方、日本では、著作権侵害の責任主体について、特許間接侵害規程の援用による判断は避けられており、純粋に著作権法上の権利(私的複製、公衆送信権、送信可能化権)侵害の問題として処理されている。
さらに、日本の不法行為法では、差止請求権がないため、最も実効性のある措置である差止請求を求めようとすれば、著作権法112条の差止請求権に訴えざるを得ない。
これによって、カラオケ法理以来、日本では、本来、直接侵害者に対して執行されるべき112条の差止請求権を、間接侵害である媒介者に対しても拡大適用してきたのである。


(差止請求権)
第百十二条  著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。


しかし、この問題は、複雑なので、いっぺんに書くのは大変すぎる。
posted by libertarian at 12:18| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | IPR(Intellectual Property Right) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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