2007年06月01日

DRM

さきのポストでは、日本のISPなどの媒介者に対する著作権侵害の責任主体判断は、著作権法112条の直接侵害に対する差止請求権の(プラグマティックな理由による)拡大適用であるということを説明した。
この現状に対する批判としてはいろいろ考えられる。

リバタリアン的な立場からすれば、まず実定法上の著作権というbundle of rightsに対する保護そのものが問題となる。
まず、これを廃止すべきだというスタンスだ。
このようなごちゃごちゃした権利体系は著作権法に特有なものであり、歴史的にアドホックな形で、利害調整目的で修正につぐ修正が加えられてきたためだ。

まず、著作権法上の権利をデジタル化された著作物に対して一切認めないという状況の思考実験をしてみれば面白い。
私はこれによって問題というべき問題は起こらないと考えている。
誰かにとって、多少不都合な事態はあっても、全体としては無い方がよいだろうという考えだ。そして多少不都合な事態とは、誰でも生きていく上で多かれ少なかれ直面する現実であるから、これに対してはいろんな対策方法が考えられる。
政府が偉そうにインセンティブ制度など設計しなくても、不都合な事態を解決すべく人類は進歩してきたのだ。

まず、デジタル化された著作物に対する製作者側のテクノロジーを用いた防衛手段が考えられる。
最近では、WMPでもiTuneでも殆どのMP3プレーヤーには、DRM(Digital Rights Management)技術が組み込まれている。
これを回避するのは誰でも簡単というわけではない。
もし、これを回避して使う人間がいても、それは全体の中ではごく一部であるし、その場合の故意の立証は容易だ。また、DRM回避技術に対しては、ウイルス対策と同様に技術的にどんどん手段を講じることが可能だ。
実際、現在はハードディクス録音、メモリープレイヤー(MP3プレーヤー)は補償金制度の政令指定対象外とな
っている。これはDRMの実効性が高いためでもあるのだ。

また、Windowsのように知財法によってもたらされる独占の地位を利用して、価格をバカ高く設定している場合
は、当然ながら違法コピーが沢山行われるだろう。
これは、その値段が法外に高いと多くの人間が判断するから”違法コピー”のインセンティブとなっているだけであ
って、もしMSがコピーをして欲しくないのであれば、単に値段を下げればいいのだ。
Windowsが5000円程度で、かつ正規購入品に対してのみ、バージョンアップのサポートが行われようにすれば(XPしかり)、”違法コピー”などおのずと激減するのである。

ようするに、自分の著作物を守りたい人間は自分の知恵でそれを守ることができる。柔軟性が0の制定法によっ
て国が大掛かりな全面的な完全保護を行う必要はない。また、それは全く経済的にも割に合わない。
政府の対策は全て税金であるから、制度に対する社会的コストなどが見えなくなっているだけだ。
水も漏らさぬ規制というのは、一旦法律化されると、政府にとって殆ど神経症的な脅迫的な仕事上のテーマとな
り、これが危険なのは言うまでもない。

また多少のフリーライドを残しておくという余裕は、野生の世界でも当然のことなのであり、これは全体としてWIN-WINになるという事実をもっと考える必要がある。
つまり実定法上の権利を与えることによるフリーライドの”完全排除”モデルは経済的にも道義的にも間違っている。

そもそも著作物というのは他者に発表したいから作られるのである。
これは絵画であろうと小説であろうと同じだろう。もし、真似されるのがどうしてもいやなら、発表しなければよい。特にYOL事件(Yomiuri Online)のようなWEBの会員制でもないページに掲載した取るに足らないタイトルをリンクしただけで、不法行為を認定したケースなどはとんでもない間違った判決だ。

井上判事ではないが、妙な喧嘩両成敗的な判決をするから、後に禍根を残すことになる。
もちろん、先例拘束は原則、日本の法定ではないことになっているから、無視すればいいのだが、これは法の”予測可能性”上、社会全体に萎縮効果をもたらす悪しき先例となるのは事実だ。

知財法絡みの問題を解決するには、国連という禄でもない機関を逆手に利用するしかないのかもしれない。
posted by libertarian at 14:31| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | IPR(Intellectual Property Right) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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