2016年07月21日

トルコは今後どうなるか?

トルコのクーデターで、エルドアンはまさに独裁者としての地位を固めつつある。戒厳令下で法の支配の全くない状態になっているようだ。エルドアンのようなイスラーム主義者にとっては、もともと世俗主義の産物でしかない国家の法律など糞食らえといったところだろう。エルドアンはこれを好都合としてトルコのイスラーム回帰を加速するのは間違いない。
もとよりエルドアンはいままでも出所不明の莫大な資金を使って大宮殿を作るなど既にやりたい放題の独裁者となっていた。

今回のクーデターがエルドアンの自作自演だろうとか、ギュレン師が黒幕だろうとか、いろいろと憶測が飛び交っているが、そういうことは誰にも検証不可能な問題なので問題にしてもしょうがない。なぜ検証不可能かといえば、今後公開される事実はすべてエルドアン側にコントロールされるからである。

それより問題は、これからどういう事態になるかである。
トルコは経済的には世俗主義をケマル・アタチュルク以来推し進めてきた結果、資源のないイスラム圏の国としてはかなりの経済的成功を収めてきたが、それを近年、イスラーム主義に方向転換しようとしているのがエルドアンだ。
そしてクーデターは、ケマル・アタチュルクの世俗主義の伝統を引き継ぐ軍部によって起こされたわけだ。軍部が世俗主義なのはケマル以来の軍事的リアリズムが背景にあるからだろう。

クーデターの失敗によってトルコのNATOでの位置づけはどうなるのか?
トルコはEUには結局入れてもらえなかったが、NATOの東の防波堤として地政学的に極めて重要な位置にあることは変わらない。
私が思うに世俗主義の軍部を粛清してしまえば、単純にトルコの軍事力は低下するだろう。伝統的に優秀な軍幹部はケマルの後継者達(ケマリスト)だ。
また世俗主義から離れれば、トルコは経済的にもダメになっていくだろう。
エルドアンのイスラーム回帰は、中長期的には軍事力の弱体化、経済の弱体化に結びつくだろう。
そして、このことが好都合なのはロシアである。
エルドアンがイスラーム回帰してヨーロッパから距離を置いていけば、同時に一方のロシアとの距離が近くなる。
こうしてみると、EUがトルコの加盟を拒否しつづけたのは非常に拙かった。EUの本質は自由貿易とNATOだからNATOの地政学的要であるトルコは入れておくべきだったのではないか。

ミアシャイマーやウォルトが指摘しているように近年のEUとNATOは、東への拡大路線をすすめロシアとの緊張を自ら高め、さらにNATOの砦であるトルコをEUから排除するという2つの誤りを犯してしまったといえる。このどちらもドイツがアホだったということだろう。
結果的に、ヨーロッパ、EUの安定性(Balance of Powers)は大きく損なわれてしまった。
posted by libertarian at 22:35| 東京 🌁| et cetera | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする