2017年02月19日

米中もし戦わば

ピーターナヴァロの「米中もし戦わば」を遅ればせながら読んだ。(原題 Crouching Tiger)
トランプ大統領の発言内容は、かなりの部分、この本の内容とオーバーラップする。
いままでチャイナ問題関連本としては、日本のチャイナウォッチャーの本しかなくアメリカの人間がどう考えているのか不明であった。しかし、ナヴァロのような視点がアメリカのチャイナウォッチャーでも共通していることがうれしかった。
もっとも本の内容としては、従来の本と比べてこの本は出色の内容で、非常にわかりやすくかつ具体的、論理的にチャイナ問題を論じている。チャイナ問題に関心のある人間には必読の書である。

最近、自衛隊関係の元幹部の書いた本としては、渡部氏の「米中戦争」というのもあり、あれもなかなか内容はよかった。
#前に書いた紹介文 →http://libertarian.seesaa.net/article/444628619.html

しかし、これは例外的な本で、今までの自衛隊関係者の書くものは、チャイナなぞ取るに足らず、いかに自衛隊が優れているかという自画自賛的なものが多かった。私はこれを非常に懐疑的にみていたが、彼ら元自衛隊幹部は、所詮、戦争のない時代にぬるま湯で出世しただけの小役人のような連中であり、敵を軽んじて自衛隊を自画自賛することが一種の処世術で出世の方便だったのだ。

この本を読むと、現実のチャイナの軍事力がどれほどの脅威になっているかがひしひしと分かる。
チャイナはアメリカの優位性に対する対抗戦略、反干渉戦略を長期ビジョンで推し進めてきており、これにアメリカが対抗するには従来の戦術を大きく転換しなければならない状況にある。
具体的にアメリカの軍事的優位性の3本柱とは1.空母戦闘群 2.第1第2列島線上の大規模基地 3.高度なC4ISRシステムにある。
チャイナは、空母に対しては1600Km彼方から空母を撃沈できる対艦弾道ミサイルを完成させており、マッハ10で飛ぶ対艦巡航ミサイルも完成させてしまった。これによってアメリカの軍事パワーの象徴的な存在ともいえるる空母戦闘群、イージスシステムは無防備な標的となり機能しない。1000億ドルの空母を100万ドルのミサイルが1発でも当たればいいわけで、このような非対称兵器の攻撃はアメリカにコストリスクを跳ね上げさせる。チャイナのこれらミサイルはゲームチェンジャーといえるものである。
2の日本やグアムにある大規模基地などはミサイル攻撃に対し全く無防備で地上に露出している。
3のC4ISRシステムという情報システムは衛星に依存しているが、チャイナはキラー衛星を完成させてしまった。現代の戦争における戦略的高地とはまさに宇宙にあり、チャイナは制宙権を確保することを主眼に宇宙開発を進めてきた。一方のアメリカはキラー衛星の技術を持たないし、宇宙開発はほとんど中止したような状況だ。

またアメリカはいままでロシアとの軍縮協定を繰り返す間に、保有ミサイルの数も種類も激減しており、一方のチャイナはそれを尻目にありとあらゆる核、ミサイルを開発し、数、種類ですでにアメリカを圧倒している。

このようにチャイナはアメリカの優位性を覆す戦略と技術を作り上げてしまっている。
またチャイナの基本戦略は、接近阻止、領域拒否である。機雷などアメリカの空母戦闘群を近づけなくさせるための技術と戦略を基本としている。そして、これらは費用の点で非対称的である。
さらに、チャイナの本土には5000Kmに及ぶと推定される地下の万里の長城があり、この地下トンネルをトラックや鉄道輸送が可能となっており、即座にミサイルを移動させることができる。
海南島には隠れた大規模な潜水艦基地がある。
アメリカは日本やグアムに基地を有するとはいえ、1万キロの距離の過酷さがあり、ホームで戦うチャイナに対しては厳しいものがある。
とはいえ、日本、韓国、台湾といった第1列島線、第2列島線こそがアメリカ本土防衛の最前線なのである。ここを死守してチャイナを封じ込めなければアメリカの軍事的敗北に等しい。

結論として、今の状態で、もし米中が戦えばアメリカに勝ち目はないということになろう。
では、アメリカはどうするべきなのか?それはこの本を読むのがいいが、トランプ政権ではこのナヴァロのビジョンに近い形で対中戦略が新たに再構築されることになるだろう。
posted by libertarian at 20:23| 東京 ☀| アメリカ政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする