2007年08月19日

Incentive of crime

バーネットの本(自由の構造)について、蔵さんの掲示板で少し話をした。
私が言ったのは、バーネットのいうところの完全賠償が、一切の懲罰賠償を含めないものだとすれば、それは、犯罪者の遣り得に必ずなるだろうということだ。

そもそもなぜ、人が金やモノを盗むのかといえばそれは捕まる確率が100%ではないからだ。
もし、捕まる確率が100%で、かつ懲罰金があれば、泥棒というのは割りにあわない行為となるので、盗みに対するインセンティブがなくなる。
#さらに言えば、捕まるまでの時間も問題になるだろうが。

捕まる確率が犯罪行為のリスクだが、窃盗犯罪でのそれが仮りに10%だとして(もっと高いかもしれないが)、100万円の泥棒をする価値は1000万円になる。
#窃盗犯罪行為に対する賠償請求が実損害(+α)程度しかないのであればそうなる。

これはパチンコや宝くじを買うよりもはるかに割がよいリスク行為だ。
当然ながら、この捕まる確率というのは、犯罪者の主観的な期待確率だから、実際はもっと小さいだろう。
この犯罪価値と賠償額の比較において、犯罪価値が高ければ博打と同様のインセンティブが発生する。
#賭博を犯罪とする国もあるが、たしかに賭博と犯罪には近い心理構造、インセンティブ構造があるかもしれない。それは自分に好都合な期待確率と、スリルである。
もっといえば、これはリスク行為全般にある性格なのかもしれない。

それに窃盗行為そのものは、短時間の行為であろうから非常に割のいいスリルを味わえることになるわけだ。
実際は、民事請求となる損害賠償を犯罪者自身はほとんどすることもないし、禁固になったとしても冷暖房完備の刑務所で楽な労働をするだけで、かなりよい只飯も食えるとなれば、さらに犯罪へのインセンティブは高まる。
この犯罪行為への経済的なインセンティブの高さは日本の服役者の再犯率が4割以上という数字が証明している。
これを経済的にナンセンスな行為にすることが犯罪阻止の基本となる。

私は、犯罪に対しては、時間選好制などといったスノッブな経済学用語を使うことは全くトンチンカンなものだと思う。そうではなく、ほとんどの犯罪は単にインセンティブの問題として扱うべきだ。
検挙率が問題なのも、犯罪者の検挙率が下がれば、これは捕まるリスクを下げることで犯罪行為に対するインセンティブを高めることになるからである。
こういったインセンティブの構造は、殺人などの重大犯罪であっても全く同じことなのだ。
未成年者犯罪であってもこのインセンティブ構造は全く同じだ。

また日本の不法行為法は懲罰賠償を認めないために、ほとんど意味、効果のない法律となっている。そして、その分、刑罰の重罰化を進めているというのが事実だろう。だが、これが本末転倒なのは言うまでもない。

基本的に、窃盗などの犯罪は、金銭賠償で償わせるだけで良いが、多くの犯罪者は勤労能力にかけているだろうから、その場合に、民間刑務所に服役させ強制労働をさせることで、懲罰的賠償額分の労働をすることで償わせるという仕組が考えられる。当然、犯罪者に正当な所持金があれば懲罰賠償額だけを払って、服役しなければ良いということになる。

こういった損害賠償モデルを一般犯罪に適用するためには、刑務所自体がビジネスとして成立していなければならない。
日本の場合は、法務省の役人が刑務所を運営している限り、刑務所がビジネス上の採算性を獲得するということは今後もあり得ない。だが、採算化が仮りに民営化によって可能であれば犯罪者の償いの在り方というのは根底から変わることになる。#日本の知財法(特許法、著作権法など)における損害賠償請求も、その根拠は全て民法709条の不法行為法によ拠っている。しかし不法行為は懲罰請求を認めないため、侵害者の遣り得になるということが以前より指摘されていた。
これもあって、知財法の刑事罰の厳罰化が進んでいると考えられる。もっとも刑事罰が適用された話はあまりきかないから、脅しのような色彩が今のところ強いのであろうが、これはやはり危険きわまりないことだ。
このようになぜか日本の立法者は不法行為法の改革でなく、刑事罰の厳罰化に驀進しているのである。
posted by libertarian at 00:39| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Law | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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